生成AIで設計書を作る方法!現役SEが実務で使う手順と注意点

生成AIで設計書を作る方法!現役SEが実務で使う手順と注意点

生成AIを使うと、設計書作成の時間はかなり短縮できます。

画面項目の整理、機能一覧のたたき台、API仕様の下書き、テスト観点の洗い出しなどは、AIと相性が良い作業です。

ただし、設計書をAIに丸投げするのは危険です。設計書は文章を整えるための資料ではなく、開発者、レビュー担当者、運用担当者、顧客側の認識をそろえるための資料だからです。

この記事では、SEとしてキャリアアップしたい人向けに、生成AIで設計書を作る実践手順と、実務で注意すべきポイントを現役SEの目線で解説します。

結論:AIにはたたき台作成と観点出しを任せる

設計書作成でAIに任せてよいのは、次のような作業です。

  • 章立てを作る
  • 要件メモから機能一覧を作る
  • 画面項目や入力チェックの候補を出す
  • API仕様のたたき台を作る
  • 非機能要件の確認観点を出す
  • レビュー前の抜け漏れを確認する

一方で、AIに任せてはいけないのは、設計判断そのものです。

たとえば、どのデータを正とするか、どの画面で入力させるか、既存システムとどこで連携するか、どの方式なら保守しやすいかといった判断は、案件の背景を理解した人間が決める必要があります。

AIは、設計書を書く人を置き換えるものではありません。

設計者が考える材料を増やし、文章化を速くし、レビュー観点を広げるための補助役として使うのが安全です。

設計書作成でAIを使う前に準備するもの

AIにいきなり「設計書を作って」と依頼しても、実務で使える資料にはなりにくいです。

先に、材料を整理してから依頼することが重要です。

最低限、次の情報を用意します。

  • システムの目的
  • 対象業務
  • 利用者の種類
  • 主要機能
  • 画面や帳票の一覧
  • 既存システムとの連携有無
  • 権限の考え方
  • 運用上の制約
  • 未決事項

この材料が少ないままAIに依頼すると、一般論としてはきれいでも、実際の案件には合わない設計書になりやすいです。

前回の記事「要件定義でAIに任せてよいこと・任せてはいけないこと」でも書いた通り、AIに任せる前に「確定事項」と「未確定事項」を分けることが大切です。

生成AIで設計書を作る実践手順

1. まず設計書の章立てを作る

最初に、AIへ設計書の構成案を作らせます。

たとえば、次のように依頼します。

「会員管理システムの基本設計書を作成します。画面設計、機能設計、データ設計、権限設計、外部連携、非機能要件、運用設計、未決事項を含む章立てを作ってください。」

章立てを先に作ると、何を設計書に書くべきかが見えやすくなります。

初心者のうちは、画面や機能だけに意識が向きがちです。しかし実務では、権限、データ移行、ログ、バックアップ、障害時の対応、運用担当者の作業まで設計に含めることがあります。

AIで章立てを作る目的は、文章を完成させることではなく、検討漏れを減らすことです。

2. 要件メモから機能一覧を作る

次に、要件メモやヒアリング結果から機能一覧を作ります。

AIには、次のように依頼できます。

「以下の要件メモから、機能一覧を表形式で作ってください。列は、機能ID、機能名、利用者、概要、入力情報、出力情報、未確認事項にしてください。メモにない内容は推測せず、未確認事項に入れてください。」

ポイントは、「メモにない内容は推測しない」と指定することです。

AIは自然な文章を作るのが得意なので、足りない情報をもっともらしく補ってしまう場合があります。設計書では、補った内容が事実のように見えることが一番危険です。

未確認事項として残すほうが、実務では安全です。

3. 画面項目と入力チェックを整理する

画面設計では、項目名、入力形式、必須チェック、桁数、初期値、エラーメッセージ、表示条件などを整理します。

AIに依頼する場合は、画面の目的と項目候補を渡して、入力チェックの候補を出してもらいます。

たとえば、会員登録画面であれば、メールアドレス、パスワード、氏名、電話番号、住所、利用規約同意などの項目があります。

ただし、個人情報をそのままAIに入れるのは避けるべきです。実データではなく、項目名やダミーデータで検討します。

このサイトでも、実務経験を記事に反映するときは、個人名、年齢、住所、学歴、顧客名などは出さず、案件の種類や作業内容だけに置き換えています。

AIを使うときも同じ考え方で、設計に必要な情報と、外に出してはいけない情報を分けるこが重要です。

4. API仕様やデータ設計のたたき台を作る

API仕様やデータ設計も、AIでたたき台を作れます。

たとえば、API仕様なら、エンドポイント、HTTPメソッド、リクエスト項目、レスポンス項目、エラーコード、認証方式、権限チェックを整理できます。

データ設計なら、テーブル候補、主キー、外部キー、ユニーク制約、履歴管理、削除方式などの観点を出せます。

ただし、ここでも最終判断は人間が行います。

データ設計は、後から変更しにくい部分です。特に、会員管理、注文管理、決済連携、在庫管理のような機能では、データの持ち方を間違えると保守が難しくなります。

AIが作ったテーブル案をそのまま採用するのではなく、業務フロー、検索条件、集計方法、将来の変更可能性を見ながらレビューします。

5. 非機能要件の観点を確認する

設計書では、機能だけでなく非機能要件も重要です。

IPAの「非機能要求グレード」は、可用性、性能、運用、セキュリティなどの観点を整理するための参考になります。

AIには、次のように依頼できます。

「このシステムの基本設計書に不足していそうな非機能要件を、可用性、性能、拡張性、運用保守性、セキュリティ、移行性の観点で指摘してください。」

初心者が見落としやすいのは、ログ出力、バックアップ、障害時の復旧、権限管理、監査、データ移行です。

AIは、こうした観点の洗い出しには役立ちます。

ただし、どのレベルまで必要かはシステムごとに異なります。個人用の小さな管理画面と、決済を含むECサイトでは、求められる安全性や運用設計が違います。

現場経験から見たAI設計書の注意点

私はこれまで、ECサイト構築、EC-CUBEプラグイン開発、会員管理システム、業務系Webシステムなどで、要件定義、設計、実装、テスト、レビュー、保守運用に携わってきました。

その経験から見ると、AIで作った設計書で特に注意すべきなのは、次の3つです。

  • 確定していない内容が確定事項のように書かれていないか
  • 実装しやすいだけで、運用しにくい設計になっていないか
  • 顧客や利用者が本当に確認すべき論点が隠れていないか

AIは文章を整えるのが得意です。

しかし、文章が整っていると、設計内容まで正しいように見えてしまいます。

たとえば、「退会済み会員の注文履歴をどう扱うか」という論点があります。

単純に考えると、退会時に会員データを削除すればよさそうに見えます。しかし、注文履歴、請求、問い合わせ対応、法務上の保管期間、分析データなどを考えると、簡単には削除できない場合があります。

このような設計判断は、AIの出力だけでは決められません。

AIに候補を出させたうえで、業務担当者、開発者、運用担当者が確認し、合意する必要があります。

AIで設計書を作るときのおすすめプロンプト

設計書作成で使いやすいプロンプト例を紹介します。

章立てを作るプロンプト

「次のシステムについて、基本設計書の章立てを作ってください。画面、機能、データ、権限、外部連携、非機能、運用、未決事項を含めてください。初心者にもレビューしやすい構成にしてください。」

機能一覧を作るプロンプト

「以下の要件メモから機能一覧を作ってください。列は、機能ID、機能名、利用者、概要、入力、出力、関連画面、未確認事項にしてください。メモにない内容は推測せず、未確認事項に入れてください。」

レビュー観点を出すプロンプト

「以下の設計書ドラフトについて、抜け漏れ、矛盾、曖昧な表現、セキュリティ上の懸念、運用上の懸念を指摘してください。修正案も出してください。」

未決事項を分けるプロンプト

「以下の設計メモを、確定事項、未確定事項、確認が必要な事項、将来対応候補に分けてください。書かれていない内容は補足しないでください。」

AI設計書をレビューするときのチェック項目

AIで作った設計書は、必ず人間がレビューします。

特に、次の項目を確認します。

  • 要件定義と矛盾していないか
  • 画面、機能、データの対応関係が取れているか
  • 権限による表示や操作の違いが書かれているか
  • エラー時の動きが書かれているか
  • ログ、バックアップ、監視、リカバリが考慮されているか
  • 個人情報や機密情報をAIに入力していないか
  • 未決事項が残っているか
  • 誰が確認すべき内容か明確になっているか

この観点は、AIコードレビューの使い方と注意点にも近いです。

コードレビューと同じで、AIの指摘は参考になりますが、最終的な責任はレビューする人間にあります。

初心者SEが今日からやること

AIで設計書を作りたい人は、まず小さく始めるのがおすすめです。

いきなり大きな設計書を完成させようとせず、次の3つから試してみてください。

1つ目は、既存の要件メモから機能一覧だけを作ることです。

2つ目は、1画面分だけ画面項目と入力チェックを整理することです。

3つ目は、作った設計書に対して「抜け漏れを指摘してください」と依頼することです。

この3つだけでも、設計書作成の負担はかなり減ります。

また、ECサイトのような具体的な題材で練習するなら、先に「ECサイト開発で初心者がつまずきやすい設計ポイント」を読んでから、画面設計やデータ設計に落とし込むと理解しやすいです。

まとめ

生成AIは、設計書作成を効率化する強力な道具です。

章立て、機能一覧、画面項目、API仕様、非機能要件、レビュー観点のたたき台作成には十分使えます。

一方で、設計判断、業務上の優先順位、顧客との合意、運用を含めた責任ある判断は人間が行う必要があります。

AIを使うSEに必要なのは、AIに文章を書かせる力だけではありません。

AIの出力を見て、何が確定事項で、何が未確認で、どこにリスクがあるのかを判断する力です。

設計書作成でAIをうまく使えるようになると、上流工程、レビュー、実装、テストまで見通しやすくなります。

SEとしてキャリアアップしたい人は、AIを設計者の代わりではなく、設計を深く考えるための補助役として使っていきましょう。