
「フォームに入力したデータは、どこに送られているの?」
Webの仕組みを学び始めると、必ずと言っていいほど登場するのが**「GET(ゲット)」と「POST(ポスト)」**という2つの謎の言葉です。これらは、HTTPメソッドと呼ばれるものの一種で、Webの世界における最も基本的な「通信のお作法」を定めています。
一言でいうと、GETとPOSTは**「私たちがWebサーバーに『お願い』をするときの、2つの異なる『伝え方』」**のことです。
この関係は、郵便に例えると非常にわかりやすいです。
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GET:宛先や用件(「○○様へ、△△の資料をください」)が、ハガキの表面に丸見えで書かれている状態。手軽で速いですが、誰にでも内容が見えてしまいます。
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POST:大事な書類や個人情報を、封筒の中に入れて、しっかりと封をして送る状態。中身が見えず安全ですが、ハガキに比べると少し手間がかかります。
この記事では、IT知識ゼロの初心者の方でもGETとPOSTの決定的な違いがわかるように、わかりやすく解説していきます。Webの裏側で行われている、基本的なコミュニケーションのルールをマスターしましょう。
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大前提となる「HTTP通信」とは?
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GETとPOSTの具体的な役割と、その違い
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どんな時に、どちらを使い分けるべきか?
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なぜこの違いの理解が、初心者にとっても重要なのか
大前提:すべての基本「HTTP通信」
GETとPOSTを理解するには、まずその舞台である**「HTTP(HyperText Transfer Protocol)」**について知る必要があります。
HTTPとは、私たちが使っているWebブラウザ(クライアント)と、Webサイトのデータが置いてあるWebサーバーが、お互いに**「会話」をするための、世界共通の通信ルール(プロトコル)**のことです。
この会話は、常にクライアントからの**「リクエスト(お願い)」で始まり、サーバーからの「レスポンス(お返事)」**で終わります。
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クライアント:「こんにちは!https://make-a-living-as-a-se.com/のページをください!」(リクエスト)
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サーバー:「はい、どうぞ!これがそのページのデータ(HTMLファイル)ですよ!」(レスポンス)
GETメソッド:「これをください!」とお願いする、シンプルな方法
GETは、その名の通り、**「サーバーから情報を取得(Get)したい」**ときに使われる、最も基本的で、最も頻繁に使われるメソッドです。
役割:指定したリソース(Webページ、画像、データなど)を、サーバーに要求します。
身近な例:
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WebブラウザのアドレスバーにURLを入力して、Webページを表示するとき。
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Webページ上のリンクをクリックして、別のページに移動するとき。
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Googleなどの検索エンジンで、キーワードを入力して検索するとき。
GETの最大の特徴:データはURLに含まれる
GETリクエストで、サーバーに何らかのデータを送りたい場合(例えば、検索キーワード)、そのデータはURLの末尾に「クエリ文字列(クエリストリング)」として、丸見えの形でくっつけられます。
Googleで「プログラミング 初心者」と検索したときのURLを見てみましょう。
https://www.google.com/search?q=プログラミング+初心者
この?以降の部分がクエリ文字列です。
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?:ここからがデータですよ、という合図。
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q=プログラミング+初心者:「qという名前のパラメータ(箱)に、『プログラミング 初心者』という値を入れて送りますよ」という意味。
GETの特徴まとめ
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用途:データの取得(Read)
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データの送り方:URLの末尾にくっつける(丸見え)
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安全性:低い(URLを見れば、送ったデータが分かってしまう)
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送れるデータ量:制限がある(URLには長さの限界があるため)
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その他:ブラウザのブックマークやお気に入りに登録できる。
POSTメソッド:「この情報をお預けします」とお願いする、安全な方法
POSTは、**「クライアントからサーバーへ、データを送信(Post)したい」**ときに使われるメソッドです。主に、新しい情報を作成したり、既存の情報を更新したりする際に用いられます。
役割:サーバーに処理してほしいデータを送りつけ、その結果、新しいリソースが作成されたり、状態が変化したりすることを期待します。
身近な例:
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Webサイトの会員登録フォームや、問い合わせフォームに入力して、「送信」ボタンを押すとき。
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SNSに、写真や文章を投稿するとき。
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ECサイトで、クレジットカード情報や配送先住所を入力して、注文を確定するとき。
POSTの最大の特徴:データは「HTTPリクエストボディ」に含まれる
POSTリクエストでは、送信するデータ(氏名、パスワード、メッセージ本文など)は、URLには含まれません。その代わりに、**「HTTPリクエストボディ」という、手紙でいうところの「封筒の中身」**に入れて、サーバーに送られます。
これにより、
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データが外部から見えない:URLを盗み見られても、どんなデータが送られたか分かりません。特に、パスワードや個人情報といった機密性の高いデータを送る際に、POSTは必須です。
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大量のデータを送れる:URLの長さ制限を気にする必要がなく、長文のメッセージや、画像ファイルのような大きなデータも送ることができます。
POSTの特徴まとめ
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用途:データの作成(Create)、更新(Update)
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データの送り方:リクエストボディに入れる(見えない)
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安全性:高い(HTTPSで暗号化すれば、通信経路上も安全)
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送れるデータ量:実質的に制限なし
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その他:ブックマークはできない(ブックマークしても、フォームの入力内容は再現されない)。
GETとPOSTの使い分け:これが鉄則!
両者の違いを理解した上で、最も重要なのが「いつ、どちらを使うべきか?」という判断です。基本的な使い分けは、非常にシンプルです。
GETを使うべきとき
- サーバーから情報を取得するだけで、サーバーの状態に変化を与えないとき。
- いわゆる**「べき等(べきとう)」**な操作(何回同じリクエストを送っても、結果が変わらない操作)のとき。
例:Webページの表示、検索結果の表示、商品一覧の表示
POSTを使うべきとき
- サーバーにデータを送信し、サーバーの状態を変化させるとき。
- パスワードや個人情報など、機密性の高い情報を送るとき。
- 送信するデータの量が多いとき(長文のブログ記事投稿など)。
例:新規会員登録、掲示板への書き込み、商品の注文
【初心者がやってはいけないNG例】
ログインフォームのパスワードを、GETで送ってしまう。
https://example.com/login?id=user&pass=password123
→ これでは、パスワードがURLに丸見えになってしまい、非常に危険です。ログイン処理は、必ずPOSTを使いましょう。
なぜ、この違いの理解が重要なのか?
プログラミング初心者にとって、GETとPOSTの違いを理解することは、Webアプリケーションの仕組みを正しく把握するための、最初の、そして最も重要なステップです。
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Webフレームワークの理解が深まる
Ruby on RailsやLaravelといったWebフレームワークを学ぶと、ルーティング(URLと処理の紐付け)の設定が出てきます。ここで、get ‘/users’やpost ‘/users’のように、同じURLでもメソッドによって処理を振り分けるのが基本です。この違いが分かっていないと、フレームワークを正しく使いこなせません。 -
API設計の基礎となる
将来、自分でAPIを設計・開発する側になったとき、どの操作にどのHTTPメソッドを割り当てるかは、RESTful API設計の基本中の基本です。GETとPOSTの思想を理解していることが、使いやすく、安全なAPIを作るための土台となります。 -
セキュリティ意識の向上
「この情報はGETで送っていいのか?」「ここはPOSTじゃないと危ないな」と、自然に考えられるようになることは、安全なWebアプリケーションを作る上で、開発者として最低限持つべきセキュリティ意識の第一歩です。
まとめ
GETとPOSTは、Webブラウザとサーバーが会話するための、2つの基本的な「お願いの仕方」です。
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GETは、「この情報をください」と、ハガキのようにオープンにお願いする方法。主にデータの取得に使われます。
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POSTは、「この情報をお預けします」と、封筒のように中身を隠してお願いする方法。主にデータの送信・作成・更新に使われます。
このシンプルな使い分けを理解するだけで、あなたが普段見ているWebサイトの裏側で、どんなコミュニケーションが行われているのかが、ぐっとクリアに見えてくるはずです。
Webフォームを作るとき、APIを呼び出すとき、そしてフレームワークを学ぶとき。常に「ここはGET?それともPOST?」と自問自答する癖をつけること。それが、あなたが一人前のWeb開発者へと成長していくための、確かな一歩となるでしょう。
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