
「ReactとかVue.jsって、最近よく聞くけど一体何者?」
「フレームワークって、使うと何が嬉しいの?」
HTML, CSS, JavaScriptという三種の神器を学び、静的なWebページを作れるようになったあなたが、次なるステップ「動的で、リッチなWebアプリケーション」の世界へ進むとき、必ずその門番として立ちはだかるのが、**React(リアクト)やVue.js(ビュージェイエス)といった「JavaScriptフレームワーク/ライブラリ」**です。
一言でいうと、これらは**「複雑で大規模なWebアプリケーションのフロントエンド(見た目や動きの部分)を、驚くほど効率的に、そして楽に開発するための『超便利な道具セット』であり『設計思想』」**のことです。
この記事では、プログラミング初心者の方でも、現代フロントエンド開発の常識がスッキリと理解できるように、わかりやすく徹底的に解説していきます。
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なぜ今、フレームワークが必須なのか?
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フレームワークが解決する「DOM操作」の苦悩
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ReactとVue.jsの基本的な考え方と、その違い
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これらを学ぶことで、どんな未来が待っているのか
物語の始まり:フレームワークがなかった頃の「辛いフロントエンド開発」
これらのフレームワークの価値を理解するには、まず、それらがなかった時代のフロントエンド開発が、どれほど大変だったかを知る必要があります。
JavaScriptを使って、動的なWebページを作るときの基本的な作業は**「DOM(ドム)操作」**です。
DOM(Document Object Model)とは、HTMLの構造を、JavaScriptが操作できる「オブジェクト(モノ)」として表現したものです。
例えば、「ボタンが押されたら、<p>タグの中のテキストを書き換える」といった処理は、JavaScriptでDOMを操作して実現します。
【素のJavaScript(Vanilla JS)でのDOM操作の例】
// HTML: <p id="message">こんにちは</p>
// <button id="myButton">変更</button>
// JavaScript
const pElement = document.getElementById('message');
const button = document.getElementById('myButton');
button.addEventListener('click', function() {
pElement.textContent = 'こんばんは';
});
簡単な処理なら、これでも問題ありません。
しかし、Twitterのタイムラインのように、「いいね!」ボタンが押されたり、新しいツイートが追加されたり、リツイートされたり…と、ページの様々な場所が、リアルタイムで、複雑に、そして頻繁に更新されるようなWebアプリケーションを想像してみてください。
素のJavaScriptだけで作ろうとすると、
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「どのデータが、ページのどの部分に対応しているのか?」
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「データが更新されたら、ページのどの部分を、どう書き換えればいいのか?」
という管理が、あっという間に複雑怪奇な**「スパゲッティコード」**になってしまいます。
「スパゲッティコードとは具体的にどんなもの?」 「なぜスパゲッティコードは絶対に書いてはいけないの?」 「どうすればスパゲッティコードを避けられるの?」 プログラミングの学習を始めると、どこかで[…]
革命の到来:ReactとVueがもたらした「宣言的UI」
この「手動での面倒なDOM操作」という苦悩から、開発者を解放するために登場したのが、ReactやVue.jsといったモダンなフレームワークです。
これは、一言でいうと**「『どうやって見た目を変更するか(How)』を逐一命令するのではなく、『データがこういう状態なら、見た目はこうあるべきだ(What)』という、”あるべき姿”だけを定義する」**という考え方です。
【Reactでの考え方】
function Greeting() {
const [message, setMessage] = useState('こんにちは'); // データの状態
// 「message」というデータが、そのまま画面に表示されるべき、と宣言
return (
<div>
<p>{message}</p>
<button onClick={() => setMessage('こんばんは')}>変更</button>
</div>
);
}
このコードでは、開発者は**「ボタンが押されたら、<p>タグの中身を書き換える」というDOM操作の命令を、一切書いていません。**
ただ、**「ボタンが押されたら、messageというデータの状態を、『こんばんは』に変える」**という、データの更新だけを行っています。
すると、Reactがデータの変更を自動的に検知し、差分だけを計算して、最も効率的な方法で、ページの必要な部分だけを、勝手に、そして超高速に再描画してくれるのです。
SPA(シングルページアプリケーション)の実現
この「差分だけを更新する」という仕組みのおかげで、**「SPA(シングルページアプリケーション)」**という、まるでデスクトップアプリのようにサクサク動くWebアプリケーションが、簡単に作れるようになりました。
これにより、ページ遷移時の「画面が真っ白になる」という現象がなくなり、非常にスムーズなユーザー体験が実現します。GmailやGoogleマップ、Facebookなどが、SPAの代表例です。
React vs Vue.js:二大巨頭の違い
ReactとVue.jsは、どちらも「宣言的UI」と「コンポーネント指向」という、同じ基本的な思想を持っています。しかし、その設計哲学にはいくつかの違いがあります。
React(リアクト)
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開発元:Meta社(旧Facebook)
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特徴:
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UIを作ることに特化した「ライブラリ」。ルーティング(画面遷移)など、UI以外の機能は、他のライブラリを自分で組み合わせて使う必要がある。
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JSXという、JavaScriptの中にHTMLのような記法でUIを記述する、独自の構文を使う。
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自由度が高い:良くも悪くも「やり方」を強制しないため、設計の自由度が高い。
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長所:
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世界で最も人気があり、エコシステム(関連ライブラリやツール)が巨大。
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求人数が圧倒的に多く、大規模なアプリケーションでの採用実績が豊富。
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どんな人/プロジェクト向け?
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大規模で、長期的な開発が予想されるプロジェクト。
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Webエンジニアとして、市場価値の高いスキルを身につけたい人。
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Vue.js(ビュージェイエス)
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開発元:エヴァン・ヨー氏(個人)を中心とするオープンソースコミュニティ
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特徴:
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プログレッシブ・フレームワーク。コアはシンプルだが、ルーティングや状態管理といった公式のライブラリが用意されており、オールインワンの「フレームワーク」として使える。
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HTMLに近いテンプレート構文で記述するため、HTML/CSSの知識がある人にとって、学習しやすい。
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公式ドキュメントが非常に丁寧で、日本語の情報も豊富。
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長所:
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学習コストが比較的低い。
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小~中規模のプロジェクトで、迅速に開発を進めやすい。
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どんな人/プロジェクト向け?
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プログラミング初心者や、フロントエンド開発の初学者。
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スピード感が求められる、スタートアップの新規事業など。
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「どちらを学ぶべき?」
これは永遠のテーマですが、
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キャリアと市場価値を最優先するなら、React。
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学習のしやすさと、迅速な開発を重視するなら、Vue.js。
と考えるのが、一つの目安です。ただし、どちらか一方をマスターすれば、もう一方の概念を理解するのは、それほど難しくありません。
フレームワークを学ぶ、その先の未来
ReactやVue.jsを学ぶことは、単に「便利なツールが使えるようになる」以上の意味を持ちます。
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コンポーネント指向の設計思想が身につく
UIを、再利用可能な小さな「部品(コンポーネント)」に分割して組み立てていく考え方は、メンテナンス性が高く、拡張しやすいアプリケーションを作るための、現代の基本設計です。 -
市場価値の高いエンジニアになれる
現在、フロントエンドエンジニアの求人のほとんどが、「ReactまたはVue.jsの開発経験」を必須、または歓迎要件としています。これらのスキルは、高収入とキャリアの安定に直結します。 -
チーム開発がスムーズになる
フレームワークが提供する「お作法」に従うことで、自然とコードの書き方が統一され、チーム内の誰が読んでも理解しやすい、属人性の低いコードになります。
「本業の給料だけでは、将来が少し不安…」「自分の技術、会社の外で通用するんだろうか?」「新しいスキルを身につけたいけど、学ぶだけじゃなく実践で使ってみたい」 もしあなたがシステムエンジニア(SE)として、このような思いを少しで[…]
まとめ
ReactやVue.jsといった現代のフロントエンドフレームワークは、複雑化するWebアプリケーション開発の救世主です。
面倒でバグの温床だった**「手動でのDOM操作」から開発者を解放し、「データの状態を管理する」**という、より本質的な作業に集中させてくれます。
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「データが変われば、見た目も勝手に変わる」という宣言的UI
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UIを再利用可能な「部品」として作る、コンポーネント指向
この2つの強力なコンセプトを武器に、まるでデスクトップアプリのようにサクサク動く「SPA」を、効率よく、そして楽しく開発することを可能にしました。
JavaScriptという言語を操る基礎体力を身につけたなら、次はこのフレームワークという「最新鋭の武器」を手に取る番です。
それは、あなたが作れるものの可能性を無限に広げ、プロのフロントエンドエンジニアとして活躍するための、必須のスキルとなるでしょう。
フロントエンドエンジニアって実際どういう事をする人なの? 具体的に何をつくっている人なんだろう 転職サイトでシステムエンジニアを検索するときの条件に「フロントエンド」や「バックエンド」といった言葉を目にし[…]