
「ページを移動しても、画面が白くならないサイトがあるけど、どういう仕組み?」
「SPA(エスピーエー)って聞くけど、普通のWebサイトと何が違うの?」
私たちが日常的に使うWebサービスの中に、まるでデスクトップのソフトウェアや、スマートフォンのネイティブアプリのように、非常にスムーズで、ストレスのない操作感を提供してくれるものがありますよね。
一言でいうと、SPAとは**「最初にたった一枚のHTMLページを読み込んだ後は、ページ遷移のたびにページ全体を再読み込みするのではなく、JavaScriptが、必要なデータだけをサーバーと通信して取得し、ページの一部だけを動的に書き換えることで、まるで一つのページ内で全てが完結しているかのように見せる、Webアプリケーションの構築手法」**のことです。
この記事では、IT知識ゼロの初心者の方でも、SPAの本質がスッキリと理解できるように、**「本を読む」**という行為に例えながら、わかりやすく徹底的に解説していきます。
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SPAが登場する前の、従来のWebサイト(MPA)との決定的な違い
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SPAが「サクサク動く」魔法の仕組み
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SPAのメリットと、知っておくべきデメリット
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なぜ、SPAの開発にはReactやVue.jsが必要なのか
物語の始まり:従来のWebサイト「MPA」という名の「紙の本」
SPAのすごさを理解するには、まず、それとは対照的な、古くから存在するWebサイトの仕組み**「MPA(マルチページアプリケーション)」**を知る必要があります。
MPAは、私たちが普段「ホームページ」と聞いてイメージする、ごく一般的なWebサイトの作り方です。
MPAを、**「紙の本」**に例えてみましょう。
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あなたは、まず「目次」のページ(トップページ)を開きます。
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「第3章」が読みたいと思い、目次のリンクをクリックします。
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すると、あなたは一度、本を閉じて、全く新しい「第3章」のページを、本棚から取り出して、開き直す必要があります。
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「第3章」を読み終え、次は「第5章」を読みたくなったら、また本を閉じ、**新しい「第5章」のページを、本棚から取り出して…**と、これを繰り返します。
ユーザーが、ページ内のリンクをクリックするたびに、
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ブラウザは、サーバーに対して「次の、新しいHTMLファイルを、まるごと一枚ください」とリクエストを送ります。
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サーバーは、リクエストに応じた、全く新しいHTMLファイルを、ブラウザに返します。
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ブラウザは、その新しいHTMLファイルを、**ゼロから、ページ全体を再読み込み(リロード)**して表示します。
この**「移動のたびに、ページ全体を、まるごと読み込み直す」という仕組みのため、どうしてもページの切り替え時に、一瞬「画面が真っ白になる」**という現象や、「待ち時間」が発生してしまいます。
「普通のWebサイトと、最近のWebアプリって、何が違うの?」「SPAっていう言葉は聞くけど、じゃあ、それ以外のサイトは何て呼ぶの?」「Webサイトのページが表示される、基本的な仕組みを知りたい!」 私たちがイ[…]
革命の到来:SPAという名の「魔法の電子書籍リーダー」
このMPAの「もっさり感」を解消し、ネイティブアプリのようなスムーズな操作性を、Webブラウザ上で実現したのが**「SPA(シングルページアプリケーション)」**です。
SPAは、例えるなら**「高機能な、魔法の電子書籍リーダー」**です。
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あなたは、最初に一度だけ、**書籍の全データ(ただし、最初は目次だけが表示される、空っぽの器のようなもの)**を、リーダーにダウンロードします。
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「第3章」が読みたいと思い、目次のリンクをタップします。
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リーダーは、本棚(サーバー)に、**「『第3章』の文章データだけください」**と、必要な部分だけをリクエストします。
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本棚(サーバー)は、文章データだけを、リーダーに送り返します。
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リーダーは、受け取った文章データを使って、現在表示されている画面の、本文エリアだけを、瞬時に「第3章」の内容に書き換えます。
ページ全体の枠組み(ヘッダーやフッターなど)は、一切変わりません。
これが、SPAの魔法の仕組みです。
その後は、
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ユーザーのアクションに応じて、
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JavaScriptが、裏側で、サーバーと必要なデータだけを、非同期通信(Ajax)でやり取りし、
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そのデータを使って、**現在のページの、一部分だけを、動的に書き換える(DOM操作)**ことで、画面遷移を実現します。
これにより、ページ遷移のたびに発生していた**「ページ全体の再読み込み」が、一切なくなります。**
ユーザーは、まるで一つのページの中で、サクサクとコンテンツが切り替わっていくような、非常にスムーズで、高速な体験を得ることができるのです。
SPAのメリットとデメリット
SPA (シングルページアプリケーション) | MPA (マルチページアプリケーション) | |
ユーザー体験(UX) | 非常に高い(高速、スムーズ) | 普通(ページ遷移ごとにもたつく) |
開発 | 複雑性が高い | シンプルで、分かりやすい |
初期表示速度 | 遅い(最初に大きなJSファイルを読み込む) | 速い(各ページは軽量) |
SEO | 対策に工夫が必要 | 有利 |
例えるなら | 魔法の電子書籍リーダー | 伝統的な紙の本 |
SPAのメリット
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圧倒的に優れたユーザー体験(UX):最大のメリットです。ページ遷移が高速で、ネイティブアプリのような滑らかな操作感を提供できるため、ユーザーの満足度が非常に高くなります。
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フロントエンドとバックエンドの完全な分離:フロントエンド(見た目)は、APIを通じてサーバーからデータ(JSON形式)を受け取ることに専念し、バックエンド(裏側の処理)は、データの提供に専念する、という役割分担が明確になります。これにより、それぞれのチームが独立して、並行で開発を進めやすくなります。
SPAのデメリット
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初期表示速度が遅くなりがち:最初に、アプリケーション全体のロジックを担う、大きなJavaScriptファイルを読み込む必要があるため、ユーザーが最初の画面を目にするまでに、少し時間がかかる場合があります。
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実装の複雑性:ページの状態管理や、ブラウザの「戻る」ボタンの挙動など、MPAでは当たり前だったことを、すべてJavaScriptで自前で実装する必要があるため、開発の難易度が上がります。
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SEO(検索エンジン最適化)の難易度:伝統的な検索エンジンのクローラーは、HTMLを読んでページ内容を理解します。SPAでは、最初のHTMLはほぼ「空っぽ」で、JavaScriptが実行されて初めてコンテンツが表示されるため、クローラーが内容を正しく認識できない、という問題がありました。(現在では、SSR: サーバーサイドレンダリングなどの技術で、この問題は大幅に改善されています)
なぜ、SPAの開発にはReactやVue.jsが必須なのか?
「JavaScriptでページの一部を書き換えるだけなら、別にjQueryとかでもできるんじゃないの?」
その通りです。しかし、Gmailのような複雑なアプリケーションを、素のJavaScriptやjQueryだけで作ろうとすると、**「状態管理」**が破綻し、あっという間に「スパゲティコード」地獄に陥ります。
「スパゲッティコードとは具体的にどんなもの?」 「なぜスパゲッティコードは絶対に書いてはいけないの?」 「どうすればスパゲッティコードを避けられるの?」 プログラミングの学習を始めると、どこかで[…]
「今、どのメールが開かれている状態か?」「返信ウィンドウは表示されているか?」「未読メールの数はいくつか?」といった、無数の**「状態(State)」**を、手動で、矛盾なく管理し、それに応じてDOMを正確に更新し続けるのは、人間業ではありません。
これらのツールは、
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仮想DOMによる、超高速な差分更新。
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コンポーネント指向による、UIの部品化と再利用。
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宣言的UIによる、「状態」の管理の簡略化。
といった、SPAを効率的に、そして堅牢に構築するための、ありとあらゆる仕組みを提供してくれます。
「JavaScriptは覚えたけど、次に何を学べばいいの?」「ReactとかVue.jsって、最近よく聞くけど一体何者?」「フレームワークって、使うと何が嬉しいの?」 HTML, CSS, JavaScript[…]
まとめ
SPA(シングルページアプリケーション)は、最初に読み込んだ一枚のページの上で、JavaScriptがデータと見た目を動的に書き換えることで、ネイティブアプリのような高速なユーザー体験を実現する、現代のWebアプリケーションの標準的な構築手法です。
それは、ユーザーを「ページリロードの待ち時間」という、Web黎明期からの呪縛から解放し、Webの可能性を、単なる「情報閲覧」のツールから、**「高度な操作が可能な、アプリケーションプラットフォーム」**へと、大きく飛躍させました。
このSPAという概念と、それを支えるReactやVue.jsといった技術を理解することは、あなたが、単に静的なホームページを作る「コーダー」から、**ユーザーに最高の体験を届ける、モダンな「フロントエンドエンジニア」**へと進化するための、避けては通れない、重要な道しるべとなるでしょう。
フロントエンドエンジニアって実際どういう事をする人なの? 具体的に何をつくっている人なんだろう 転職サイトでシステムエンジニアを検索するときの条件に「フロントエンド」や「バックエンド」といった言葉を目にし[…]