「SE」と聞くと、多くの人がIT企業(SIerなど)に所属し、お客様の会社に常駐してシステムを開発する姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、SEにはもう一つの魅力的な働き方があります。それが**「社内SE」**です。
社内SEは、IT企業ではなく、メーカーや金融、商社といった一般企業の情報システム部門などに所属し、「自社の社員」のために働くエンジニアです。
いわば、ITの力で会社と仲間を支える「縁の下の力持ち」であり、社内のヒーローのような存在です。
この記事では、これからSEを目指すあなたに向けて、社内SEのリアルな仕事内容から、求められるスキル、その魅力と注意点まで、わかりやすく解説していきます。
社内SEの具体的な仕事内容:「会社のIT何でも屋さん」
社内SEの仕事は非常に幅広く、会社や組織の規模によっても異なりますが、主に以下の4つに大別されます。
1. ヘルプデスク・テクニカルサポート
社内SEの仕事として最もイメージしやすいのが、このヘルプデスク業務です。「パソコンが起動しない」「ネットワークに繋がらない」「新しいソフトの使い方がわからない」といった、社員からのあらゆるITに関する問い合わせに対応します。まさに、**「社内のIT相談窓口」**です。社員から直接「ありがとう」と言われる機会も多く、やりがいを感じやすい仕事です。
2. 社内システムの企画・開発・導入
これが社内SEの仕事の核となる部分です。「営業部の業務をもっと効率化したい」「経理の入力作業を自動化したい」といった、各部署の課題を解決するためのシステムを企画します。
企画したシステムを、自分たちでプログラミングして開発することもあれば、多くの場合、外部のIT企業(SIerなど)に開発を依頼します。その際は、要件を正確に伝え、プロジェクトの進捗や品質を管理する**「ベンダーコントロール」**が重要な役割となります。自社のビジネスの根幹に関わる、非常にダイナミックな仕事です。
3. インフラの構築・運用・保守
社員が毎日快適に仕事ができるよう、社内のITインフラ(ネットワーク、サーバー、セキュリティなど)を安定して動かすための仕事です。新しい社員が入社すればPCをセットアップし、サーバーに障害が起きれば昼夜を問わず復旧作業にあたることもあります。会社の基盤を支える、責任の大きな役割です。
4. IT資産管理と戦略立案
会社が所有するPCやスマートフォン、ソフトウェアのライセンスなどを管理するのも大切な仕事です。また、経営層と連携し、「今後、会社としてどのようなIT投資を行っていくべきか」といったIT戦略の立案に関わることもあります。
このように、社内SEは「プログラミングだけをする人」ではなく、企画から運用、サポートまで、ITに関するあらゆる業務に携わる**「ジェネラリスト」**と言えるでしょう。
社内SEに求められるスキル:技術力より「人間力」?
幅広い業務内容をこなすため、社内SEには特有のスキルセットが求められます。
技術スキル(ハードスキル)
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幅広いITの基礎知識:ネットワーク、サーバー、データベース、セキュリティ、各種OSやソフトウェアなど、特定の技術に特化するよりも、広く浅い知識が求められます。
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プロジェクトマネジメント/ベンダーコントロールスキル:外部ベンダーと円滑に仕事を進めるための、要件定義、進捗・品質管理、交渉のスキルは非常に重要です。
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プログラミングスキル:必須ではない企業も多いですが、簡単なツールを自分で作ったり(PythonやVBAなど)、ベンダーが作ったコードの内容をレビューしたりできると、非常に重宝されます。
非技術スキル(ソフトスキル)
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圧倒的なコミュニケーション能力:これが最も重要なスキルです。ITに詳しくない社員の「なんとなく、こうなったら便利」という要望を丁寧にヒアリングし、その本質を汲み取る力。そして、難しい技術的な内容を、誰にでもわかる言葉で説明する力が不可欠です。
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業務知識と課題発見能力:自社のビジネスや各部署の業務フローを深く理解し、「ここにITを導入すれば、もっと良くなるのでは?」と課題を発見し、提案する力が求められます。
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調整力と交渉力:部署間の利害を調整したり、予算を獲得するために経営層を説得したり、ベンダーと価格や納期を交渉したりと、様々な場面で調整役を担います。
社内SEになるメリットと注意点(デメリット)
社内SEには、SIerのSEとは異なる魅力と、知っておくべき注意点があります。
メリット
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ワークライフバランスが保ちやすい:お客様が自社の社員であるため、比較的納期の調整がしやすく、残業が少ない傾向にあります。客先常駐もなく、腰を据えて長く働きやすい環境です。
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ユーザー(社員)の顔が見えるやりがい:自分が導入したシステムによって、同僚の業務が楽になり、喜んでいる姿を直接見ることができます。これは大きなモチベーションになります。
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上流工程に携わりやすい:システムの企画や要件定義といった、ビジネスの根幹に関わる部分から担当できるチャンスが多いです。
注意点(デメリット)
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最先端の技術に触れにくい:新規開発よりもシステムの安定稼働が重視されるため、枯れた(安定した)技術を長く使い続けることが多く、技術的な成長スピードは緩やかになる可能性があります。
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評価されにくいことがある:直接利益を生み出す部門ではないため、「コストセンター(経費を使う部門)」と見なされ、会社内での評価や待遇が低くなる場合があります。
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「何でも屋」になりやすい:ITに関することなら何でも頼まれ、本来の業務ではない雑務に追われてしまうこともあります。
まとめ:社内SEは、会社の未来を作るキーパーソン
社内SEは、最新技術をゴリゴリ追求するスペシャリストというよりは、ITとビジネス、そして「人」をつなぐ架け橋のような存在です。
技術力はもちろん必要ですが、それ以上に、仲間を助けたいという想いや、会社をより良くしたいという当事者意識が大切になります。
もしあなたが、「技術を追求するだけでなく、ビジネス全体に関わりたい」「人の役に立っている実感を得たい」「安定した環境で長く働きたい」と考えるなら、社内SEは非常に魅力的なキャリアパスです。