
「Webサイトの裏側では、データベースとSQLが動いているんだ」
ITの世界に足を踏み入れると、必ずと言っていいほど耳にする**「SQL(エスキューエル、またはシークェル)」**という言葉。
しかし、プログラミング言語とは少し違うようで、「一体何者なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
一言でいうと、SQLとは**「データベースという、巨大なデータの保管庫と会話するための、世界共通のコミュニケーション言語」**のことです。
この記事では、プログラミング知識ゼロの初心者の方でもSQLの正体がわかるように、わかりやすく解説していきます。
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SQLが活躍する舞台「データベース」とは?
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SQLで具体的に何ができるのか?(4つの基本命令)
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なぜSQLは、あらゆるエンジニアにとって必須のスキルなのか?
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SQLを学ぶための第一歩
SQLが活躍する舞台:「データベース」という巨大な図書館
SQLを理解するには、まずその対話相手である「データベース」を知る必要があります。
データベースとは、大量のデータを、整理された形で、安全に、そして効率よく保管・管理しておくためのシステムです。特に、現代の主流である**「リレーショナルデータベース(RDB)」は、データをExcelのシートのような「テーブル(表)」**の形式で管理します。
例えば、あるECサイトのデータベースには、
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「顧客テーブル」(顧客ID、氏名、住所、電話番号…)
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「商品テーブル」(商品ID、商品名、価格、在庫数…)
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「注文テーブル」(注文ID、顧客ID、商品ID、注文日…)
といった、複数のテーブルが存在します。そして、これらのテーブルは「顧客ID」や「商品ID」といった共通の項目で、互いに**関連(リレーション)**付けられています。
この巨大で複雑なデータの集合体(データベース)から、私たちが「Aさんが過去に買った商品の一覧が見たい」と思ったときに、人間が直接データを探し出すのは不可能です。
そこで、データベースの「優秀な司書さん」である**「DBMS(データベース管理システム)」**に、**SQLという決まった言葉(命令)**でお願いをすることで、DBMSが私たちの代わりに、瞬時に、そして正確にデータを見つけ出してくれるのです。
SQLでできること:データベースを操る4つの基本命令
SQLの命令には様々な種類がありますが、その基本はたった4つの操作に集約されます。これらの頭文字をとって**「CRUD(クラッド)」**と呼ばれます。
C: Create(生成) → 新しいデータを追加する
R: Read(読み取り) → データを検索・取得する
U: Update(更新) → 既存のデータを変更する
D: Delete(削除) → データを削除する
それぞれの操作に対応する、代表的なSQL命令を見ていきましょう。
1. SELECT文:「データを“探してきて”」
SQLの中で最もよく使われ、最も重要なのが、このSELECT文です。データベースから、条件に合ったデータを検索・取得(読み取り)するための命令です。
【例:商品テーブルから、価格が1000円以下の商品名を探してきて!】
SELECT 商品名
FROM 商品テーブル
WHERE 価格 <= 1000;
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SELECT 商品名:「商品名」の列が欲しいです。
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FROM 商品テーブル:「商品テーブル」という表から探してください。
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WHERE 価格 <= 1000:ただし、「価格が1000円以下のもの」という条件でお願いします。
この命令を送ると、DBMSは条件に合う商品の名前だけを、一覧にして返してくれます。
さらに、複数のテーブルを連携(JOIN / ジョイン)させることもできます。
【例:Aさんの注文履歴(注文日と商品名)を探してきて!】
SELECT T2.注文日, T3.商品名
FROM 顧客テーブル AS T1
JOIN 注文テーブル AS T2 ON T1.顧客ID = T2.顧客ID
JOIN 商品テーブル AS T3 ON T2.商品ID = T3.商品ID
WHERE T1.氏名 = 'Aさん';
このように、JOINを使うことで、バラバラのテーブルを関連付け、複雑な情報を引き出すことができるのです。
2. INSERT文:「このデータを“追加して”」
テーブルに新しい行(データ)を追加(生成)するための命令です。
【例:顧客テーブルに、新しい顧客「Bさん」の情報を追加して!】
INSERT INTO 顧客テーブル (顧客ID, 氏名, 住所)
VALUES (101, 'Bさん', '東京都新宿区...');
この命令で、顧客テーブルにBさんの情報が1行、新たに追加されます。
Webサイトの会員登録フォームでユーザーが情報を入力し、「登録」ボタンを押したとき、裏側ではこのようなINSERT文が実行されています。
3. UPDATE文:「このデータを“書き換えて”」
すでに存在するテーブルのデータを、新しい内容に更新するための命令です。
【例:商品ID「S001」の商品の価格を、1500円に書き換えて!】
UPDATE 商品テーブル
SET 価格 = 1500
WHERE 商品ID = 'S001';
WHERE句で条件を指定しないと、テーブルのすべての行が更新されてしまうため、UPDATE文とDELETE文では、WHERE句の指定が非常に重要です。
マイページで自分の住所を変更したときなどに、このUPDATE文が使われます。
4. DELETE文:「このデータを“消して”」
テーブルから、指定した行を削除するための命令です。
【例:顧客ID「102」の顧客情報を削除して!】
DELETE FROM 顧客テーブル
WHERE 顧客ID = '102';
Webサービスを「退会」したときなどに、このDELETE文が実行され、ユーザー情報が削除されます。
この4つの基本命令を組み合わせることで、私たちはデータベース内のデータを自由自在に操作することができるのです。
なぜSQLは、すべてのITエンジニアにとって必須スキルなのか?
「私はWebデザイナーだから関係ない」「AIエンジニアを目指してるから不要」…そう思うのは、非常にもったいないことです。現代のITサービスにおいて、データが関わらないものは、ほぼ皆無です。
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Webエンジニア
ユーザー情報、商品情報、ブログ記事など、動的なWebサイトのコンテンツはすべてデータベースにあります。PHPやRubyといったプログラミング言語の中からSQLを呼び出して、データを操作するのが日常業務です。 -
データサイエンティスト/AIエンジニア
データ分析や機械学習モデルの訓練を行うには、まず分析対象となる膨大なデータをデータベースから抽出しなければなりません。効率よくデータを取得するためのSQLスキルは、分析の精度とスピードを左右する生命線です。 -
インフラエンジニア
データベースの性能を最大限に引き出すための設定(パフォーマンスチューニング)や、バックアップ・復元といった運用管理において、SQLの知識は不可欠です。 -
企画職・マーケター
「先月の年代別売上トップ10は?」「このキャンペーンに登録したユーザーの属性は?」といった分析を行う際、自分でSQLを書いてデータを抽出できれば、エンジニアに依頼する手間なく、スピーディーに意思決定ができます。
SQLを学ぶための第一歩
SQLは、プログラミング言語に比べて覚えるべき構文が少なく、目的も「データベース操作」に特化しているため、初心者にとって非常に学びやすい言語です。
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学習サイトで体験してみる
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Progateやドットインストールといった学習サイトには、SQLの入門コースがあります。ブラウザ上で実際にSQLを書きながら、ゲーム感覚で基本を学ぶことができます。まずはここで「SELECT文って面白い!」という体験をしてみるのがおすすめです。
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自分のPCに環境を構築してみる
学習サイトで基礎を覚えたら、自分のパソコンで実際にデータベースを動かしてみましょう。MySQLやPostgreSQLといった、無料で使える高機能なデータベースソフトウェアをインストールし、自分でテーブルを作ったり、データを追加したりしてみることで、理解は飛躍的に深まります。 -
書籍で体系的に学ぶ
一冊、信頼できる入門書を手元に置いておくと、知識が整理され、辞書代わりにも使えます。『スッキリわかるSQL入門』(インプレス)などは、初心者向けに非常に定評があります。
「プログラミングを始めたけど、データベースって何?」「Webアプリ開発にはDBが必須って聞いたけど、どうやって勉強すればいいの?」「できればお金をかけずに、DBの基礎をしっかり学びたい…」 プログラミング学習を[…]
まとめ
SQLは、プログラマーだけのものではありません。それは、**データという現代社会の「石油」が眠る、巨大なデータベースという油田から、自由に価値を掘り出すための「魔法のドリル」**です。
その構文はシンプルでありながら、奥深く、使いこなせばビジネスの意思決定から最先端のAI開発まで、あらゆる場面であなたの力を何倍にも高めてくれます。
英語が世界中の人々とコミュニケーションをとるためのグローバル言語であるように、SQLは世界中のデータベースとコミュニケーションをとるための、IT業界のグローバル言語です。
「Webアプリ開発にはデータベースが必須らしいけど、どれを選べばいいの?」「自分のPCにデータベースをインストールする方法が、難しくてよくわからない…」「無料で使えて、プロも現場で使っているDBを知りたい!」 プログラミング学[…]