
「プログラマーとどう違うの?」
IT業界に興味を持つと、必ずと言っていいほど耳にする「SE(システムエンジニア)」という職業。
SEとは、顧客の要望をヒアリングし、それを実現するためのITシステムの「設計図」を描く専門家です。
家づくりに例えるなら、顧客の「こんな家に住みたい」という夢を形にする「建築士」のような存在です。実際にコードを書いて家を建てる「大工」がプログラマーにあたります。
そして、このSEという仕事は、実は**「何を」「どのように」作るかによって、多種多様な種類に分かれています。**
この記事では、これからIT業界を目指す初心者の方に向けて、SEの様々な種類を具体的な仕事内容や特徴を交えながらわかりやすく解説します。
SEの種類を分ける「2つの軸」
SEの世界は広大です。いきなり種類を羅列すると混乱してしまうので、まずはSEを分類するための「2つの軸」を理解しましょう。
軸1:担当する業務領域(何を作るか?)
これは、「誰のために、どんな目的のシステムを作るのか」という分類です。
大きく分けて以下の3つがあります。
- 業務系SE:企業のビジネス活動を支えるシステムを作る。
- Web系SE:私たちが普段使うWebサイトやスマホアプリを作る。
- 組み込み・制御系SE:家電や自動車など、「モノ」を動かすシステムを作る。
軸2:担当する技術領域(システムのどの部分を作るか?)
これは、「システムの中のどのパーツを担当するのか」という技術的な分類です。
- アプリケーションSE:ユーザーが直接触れる画面や機能を作る。
- インフラSE:システムが動くための土台(サーバーやネットワーク)を作る。
それでは、まずは「業務領域」による3つのSEについて、詳しく見ていきましょう。
【業務領域別】3つのSEを徹底解説!
1. 業務系SE:企業のビジネスを支える「オーダースーツの仕立て屋さん」
企業の心臓部とも言えるシステムを作るのが「業務系SE」です。
彼らが作るシステムは、私たちの社会や経済活動に不可欠なものばかりです。
具体的な仕事内容
- 銀行の勘定系システム(預金や振込を管理)
- 企業の会計システム、販売管理システム、人事給与システム
- 工場の生産管理システム
- 官公庁の各種手続きシステム
特徴
- 顧客との対話が最重要:顧客企業の業務内容を深く理解し、「どうすればもっと仕事が楽になるか」「どんな機能が必要か」を徹底的にヒアリングして設計図に落とし込みます。
- ウォーターフォール開発が主流:最初に全体の計画を綿密に立て、要件定義→設計→開発→テストという工程を順番に進める開発手法が一般的です。
- 高い正確性と安定性が求められる:お金や個人情報を扱うことが多く、1円のズレやシステムの停止が許されない、ミッションクリティカルなシステムを扱います。
- 業界知識が強みになる:「金融のプロ」「製造業のプロ」といったように、特定の業界知識を持つSEは非常に重宝されます。
どんな人に向いている?
- 人と話すのが好きで、相手の要望を整理するのが得意な人。
- 物事を順序立てて、論理的に考えるのが好きな人。
- 一つの分野を深く掘り下げて専門家になりたい人。
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2. Web系SE:流行の最先端を行く「ファッションデザイナー」
私たちが日常的に使うECサイトやSNS、ニュースサイト、スマホアプリなど、インターネット上のサービスを作るのが「Web系SE」です。
具体的な仕事内容
- ECサイト(Amazon、楽天市場など)
- SNS(Twitter, Instagramなど)
- 動画配信サービス(YouTube, Netflixなど)
- 各種Webメディアやスマホゲーム
特徴
- スピード感が命:市場のトレンドは目まぐるしく変わるため、「とりあえず作ってリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善していく」というアジャイル開発が主流です。
- 新しい技術を積極的に採用:常に新しいプログラミング言語やフレームワークが登場し、それらを積極的に取り入れてより良いサービスを目指す文化があります。
- ユーザーの反応がダイレクト:「この新機能、使いやすい!」「アクセスが重い…」といったユーザーからのフィードバックが直接届くため、やりがいを感じやすいです。
- BtoCサービスが多い:不特定多数の一般ユーザー(Consumer)向けのサービス開発が中心です。
どんな人に向いている?
- 新しい技術やトレンドを追いかけるのが好きな人。
- 自らアイデアを出し、サービスを育てていくことに興味がある人。
- ユーザーからの「ありがとう」をやりがいに感じられる人。
3. 組み込み・制御系SE:モノに魂を吹き込む「精密機械の職人」
家電製品や自動車、産業ロボット、医療機器など、様々な「モノ」に組み込まれてその動きを制御するコンピューターシステムを作るのが「組み込み・制御系SE」です。
具体的な仕事内容
- スマートフォンのカメラ機能やOS
- 自動車のエンジン制御、自動ブレーキシステム
- デジタルカメラ、炊飯器、エアコンの制御プログラム
- 工場の産業用ロボットの動作制御
特徴
- ハードウェアの知識が必須:ソフトウェアだけでなく、CPUやメモリ、センサーといったハードウェアの知識も必要になります。
- 限られた資源での開発:パソコンと違い、組み込まれるコンピューターはメモリや処理能力が非常に限られています。その中でいかに効率良くプログラムを動かすか、という腕が問われます。
- 極めて高い信頼性が要求される:特に自動車や医療機器など、システムの誤作動が人命に直結する分野では、絶対にバグが許されない厳しい品質管理が求められます。
- C言語などが活躍:ハードウェアを直接制御するのに適した、C言語やC++といったプログラミング言語が今も主流で使われています。
どんな人に向いている?
- 純粋に「モノづくり」が好きな人。
- プラモデル作りや電子工作など、細かい作業が好きな人。
- パズルのように、制約の中で最適な答えを見つけ出すのが得意な人。
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【技術領域別】あなたはどっち派?アプリSE vs インフラSE
さて、上記3つの業務領域は、さらに技術的な担当範囲によって2つに分かれます。
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アプリケーションSE(アプリSE)
ユーザーが直接見たり、操作したりする部分(アプリケーション)を開発するSEです。
業務系SEであれば会計ソフトの画面や入力機能、Web系SEであればECサイトの商品一覧ページや購入ボタンの処理などを担当します。プログラマーからステップアップする人が多く、JavaやPHP、Pythonといったプログラミング言語の知識が中心となります。 -
インフラSE
アプリケーションが正常に動くための「土台(インフラストラクチャー)」を設計・構築・運用するSEです。
家を建てる前の「土地造成」や「電気・水道・ガス工事」に例えられます。サーバーの選定・構築、ネットワークの設定、データベースの管理、セキュリティ対策などを担当します。最近ではAWSやAzureといったクラウドサービスの専門家もインフラSEに含まれます。
まとめ:SEの世界は広大!自分の「好き」を見つけよう
ここまで見てきたように、「SE」と一言で言っても、その仕事内容は多岐にわたります。
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企業の課題解決に貢献したいなら「業務系SE」
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世の中のトレンドを作り、ユーザーをワクワクさせたいなら「Web系SE」
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身の回りのモノを賢く動かすことに興味があるなら「組み込み・制御系SE」
まずは、この3つの大きな方向性の中から、自分が「面白そう!」「やってみたい!」と感じる分野を見つけることが、あなたに合ったSEへの第一歩です。
どの道を選んだとしても、SEはこれからの社会にますます必要とされる、やりがいと将来性に満ちた仕事です。
この記事をきっかけに、ぜひSEという職業の奥深い世界に、さらに興味を持っていただければ幸いです。
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