
「スパゲッティコードとは具体的にどんなもの?」
「なぜスパゲッティコードは絶対に書いてはいけないの?」
「どうすればスパゲッティコードを避けられるの?」
プログラミングの学習を始めると、どこかで「スパゲッティコード」という言葉を耳にすることがあるでしょう。
「スパゲッティ」と聞くと美味しそうなイメージが湧きますが、プログラミングの世界では、エンジニアたちが頭を抱える「悪夢のようなコード」の代名詞です。
この記事では、プログラミング初心者の方に向けて、冒頭で述べた3つのポイントを、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。
動くコードが書けるようになった次のステップとして、ぜひ「きれいなコード」への意識を高めていきましょう。
スパゲッティコードの正体とは?
スパゲッティコードとは、その名の通り、ソースコードがまるで皿の上のスパゲッティのように、複雑に絡み合ってぐちゃぐちゃになった状態を指す言葉です。
料理に例えてみましょう。
美味しいカルボナーラを作るには、「パスタを茹でる」「ソースを作る」「盛り付ける」という手順が明確に分かれていますよね。
しかし、もしレシピが「麺と生卵とベーコンとチーズを全部一つの鍋に放り込んで、火加減を適当に調整しながら、いい感じになるまで混ぜ続けろ」としか書かれていなかったらどうでしょう?
おそらく、何がどうなっているのか分からず、まともな料理は作れません。仮に偶然うまくできても、なぜ成功したのか分からず、二度と再現できないでしょう。
スパゲッティコードは、まさにこの「ぐちゃぐちゃなレシピ」と同じ状態です。
スパゲッティコードの具体的な特徴
では、実際にどのようなコードが「スパゲッティ」と化してしまうのでしょうか。
その代表的な特徴を5つ紹介します。
1. 長すぎる関数(メソッド)
一つの関数の中に、何百行、何千行とコードが書かれている状態です。本来は別々の役割を持つべき処理が、すべてごちゃ混ぜになっています。
例: 「ユーザー登録」という一つの関数の中に、「入力内容のチェック」「データベースへの保存」「登録完了メールの送信」「初回ログインボーナスの付与」「管理者に通知」といった処理が全部詰め込まれている。
2. 処理がアチコチに飛ぶ(goto文の多用など)
コードが上から下へ順番に実行されず、あちこちにジャンプしまくります。昔の言語で使われたgoto文がその典型ですが、現代でも複雑なif文のネスト(入れ子)などで同様の状況が生まれます。
例: 本を1ページ目から順に読むのではなく、「3ページ目を読んだら50ページへ飛べ、もし条件Aなら12ページに戻れ」といった指示が乱立し、物語の筋が全く追えなくなる状態。
3. コピペの嵐
「ちょっと違うけど、似たような処理」を実装するときに、すでにあるコードをコピー&ペーストして少しだけ書き換える、ということを繰り返したコードです。同じようなコードの塊が、ファイルのあちこちに点在してしまいます。
4. 意味不明な名前
変数や関数に付けられた名前が、その役割を表していない状態です。
例: a, b, c や data1, tmp2, proc3 といった名前ばかりで、何の値が保存されているのか、何をするための関数なのか、コードを一行ずつ読まないと全く分かりません。
5. 関係ない処理の混在
一つの場所に、本来は全く関係のない処理が書かれています。
例: 「商品の価格を計算する」という処理の途中に、なぜか「今日の天気を取得して画面の背景を変える」という処理が紛れ込んでいる。
なぜスパゲッティコードは「悪」なのか?
プログラミングを始めたばかりの頃は、「とにかく動けばいいじゃないか」と思ってしまうかもしれません。
しかし、スパゲッティコードには、あなたの未来を暗くする深刻な問題点が潜んでいます。
問題点1:読めない(可読性の低下)
最大の問題はこれです。コードが複雑すぎて、書いた本人でさえ数週間後には「これ、どういう仕組みだっけ…?」と分からなくなります。当然、他の人が読むのはもっと困難です。
問題点2:バグの温床になる
コードが読めないということは、どこにバグが潜んでいるかを発見するのが非常に難しいということです。
デバッグ(バグ修正)作業に何日もかかったり、一つのバグを直したら、別の場所で新たなバグが10個生まれる、といった悲劇が起こります。
問題点3:修正が怖い(保守性の低下)
システムの機能追加や仕様変更が必要になったとき、どこを直せばいいのか分かりません。また、ある部分を修正した影響が、全く予期せぬ別の部分に及ぶ「副作用」が起こりやすくなります。
結果として、誰もがそのコードに触れるのを恐れ、システムが改善されないまま放置される「レガシーシステム」の原因となります。
問題点4:再利用できない
「このメール送信機能、別の場所でも使いたいな」と思っても、スパゲッティコードでは機能が他の部分と密接に絡み合っているため、きれいに取り出して再利用することができません。
結果、また同じような機能をコピペして書くことになり、さらにスパゲッティ化が進行します。
問題点5:チーム開発が不可能になる
仕事のプログラミングは、ほとんどがチームで行われます。あなたが好き勝手に書いたスパゲッティコードは、同僚にとって「解読不能な暗号」でしかありません。
これでは、協力して開発を進めることなど到底不可能です。
スパゲッティコードを避けるための「黄金のルール」
では、どうすればこの恐ろしいスパゲッティコードを避けられるのでしょうか?初心者でも今日から実践できる、4つの基本的なルールをご紹介します。
ルール1:小さく、シンプルに分ける
「一つの関数(メソッド)には、一つの役割だけ」を持たせることを徹底しましょう。これは**「単一責任の原則」**と呼ばれ、きれいなコードを書くための最も重要な考え方です。
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悪い例: registerUserAndSendEmail() (ユーザー登録とメール送信を一つの関数でやる)
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良い例: registerUser() と sendWelcomeEmail() という2つの関数に分ける。
ルール2:分かりやすい名前をつける
変数や関数の名前は「未来の自分や他人への手紙」です。誰が読んでもその役割がひと目で分かるような、具体的で分かりやすい名前をつけましょう。
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悪い例: let x = 30;
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良い例: let userAge = 30;
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悪い例: function do_it() { … }
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良い例: function calculateTotalPriceWithTax() { … } (税込みの合計金額を計算する)
ルール3:同じことを繰り返さない(DRY原則)
DRYとは “Don’t Repeat Yourself” の略で、「同じことを繰り返すな」という意味の原則です。
ソースコード内に同じような記述が2回以上出てきたら、それは関数化・共通化できるサインです。
ルール4:「なぜ」を伝えるコメントを書く
コメントは、コードの意図を補足するための重要なツールです。ただし、コードを見れば分かること(What)を書くのは無意味です。
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悪いコメント: i = i + 1; // iに1を足す
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良いコメント: // 割引キャンペーンの特殊仕様のため、ここでは手動で価格を調整する
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まとめ:きれいなコードは、未来の自分への最高のプレゼント
スパゲッティコードは、目先の楽さを求めて書いた結果、将来の自分やチームメンバーに膨大な「技術的負債」を押し付ける行為です。
きれいなコードを書くことは、単なる自己満足や見た目の問題ではありません。
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バグの少ない、高品質なシステムを作ること
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開発や修正をスピーディーに行うこと
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チームメンバーと円滑に協力すること
これらすべてに直結する、プロのエンジニアにとって必須のスキルです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、常に「このコードは、半年後の自分が見ても理解できるだろうか?」「プログラミングを全く知らない人に説明できるくらい、シンプルだろうか?」と自問自答する癖をつけることが、上達への一番の近道です。
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