
「スマホゲームで、世界中の人といつでも対戦できるのはどうして?」
私たちが当たり前のように使っているITサービス。
その「当たり前」を裏側で支えているのが、**「インフラSE(インフラストラクチャー・システムエンジニア)」**です。
インフラSEは、ITの世界の「縁の下の力持ち」。例えるなら、家を建てる前の土地を整備し、電気・ガス・水道といったライフラインを引き、頑丈な土台を作る仕事です。どんなに素晴らしい家(アプリケーション)も、しっかりした土台がなければ建ちませんし、ライフラインがなければ生活できませんよね。
この記事では、IT知識ゼロの初心者の方でもインフラSEの仕事がわかるように、次の内容をわかりやすく、徹底的に解説していきます。
-
インフラSEの具体的な仕事内容
-
専門分野とアプリケーションSEとの違い
-
仕事のやりがいと大変さ
-
インフラSEになるためのステップ
インフラSEの仕事とは?~システムの一生に寄り添う~
インフラSEの仕事は、一度作って終わりではありません。システムが生まれてから役目を終えるまで、その一生に寄り添うのが特徴です。
仕事の流れは、大きく「設計」「構築」「運用・保守」の3つのフェーズに分かれます。
1. 設計フェーズ:「最強の土台」の設計図を描く
すべての始まりは、顧客の「こんなシステムが欲しい」という要望を聞くことからです。
アプリケーションSEが「どんな機能が欲しいか」を聞くのに対し、インフラSEは**「そのシステムを、どうやって安定して動かすか」**という視点で設計図を描きます。
-
性能・拡張性:将来ユーザーが100倍に増えても、サーバーを増やすだけで対応できるか?(家の増築は可能か?)
-
可用性:地震や停電が起きても、システムが止まらないようにするにはどうするか?(災害に強い家か?)
-
セキュリティ:悪意のあるハッカーの攻撃から、どうやってシステムやデータを守るか?(家の防犯対策は万全か?)
-
コスト:予算内で、最適な性能を発揮できる機材やサービスはどれか?
2. 構築フェーズ:設計図を現実に作り上げる
設計図が完成したら、いよいよ「工事」の開始です。物理的な機材を扱うこともあれば、クラウド上で作業することもあります。
-
サーバーの準備:データセンターに行き、サーバーラックにサーバー本体を設置し、配線する(ラッキング)。
-
OSのインストール:サーバーにLinuxやWindows ServerといったOS(コンピューターの基本ソフト)をインストールし、設定する。
-
ネットワークの設定:ルーターやスイッチといったネットワーク機器を設定し、サーバー同士が通信できるようにする。
-
ミドルウェアの導入:データベース管理ソフト(MySQLなど)やWebサーバーソフト(Apacheなど)をインストールし、アプリケーションが動くための環境を整える。
3. 運用・保守フェーズ:システムの「守護神」となる
インフラが完成し、システムが動き出してからが、インフラSEの腕の見せ所です。
24時間365日、システムが止まらないように見守り、何かあればすぐに対応します。
-
監視:サーバーやネットワークに異常がないか、専門のツールを使って常に監視します。「サーバーのCPU使用率が異常に高い」「ネットワークの通信が遅い」といった予兆をいち早くキャッチします。
-
障害対応:「Webサイトが見られない!」といったトラブルが発生した際に、原因を特定し、迅速に復旧作業を行います。まさにシステムの「お医者さん」です。
-
メンテナンス:セキュリティ強化のためのパッチを適用したり、OSをアップデートしたり、定期的な健康診断とメンテナンスを行います。
インフラSEの専門分野
インフラと一言で言っても、その専門領域は多岐にわたります。経験を積むと、特定の分野のスペシャリストとして活躍することが多いです。
-
サーバーエンジニア
サーバーの設計・構築・運用を専門とします。OS(特にLinux)や仮想化技術に詳しく、システムの「心臓部」を担います。 -
ネットワークエンジニア
システムの「神経網」であるネットワークを専門とします。ルーターやスイッチ、ファイアウォールといった機器を扱い、データの通り道を設計・構築します。 -
セキュリティエンジニア
サイバー攻撃からシステムを守る「警備員」です。セキュリティ製品の導入や、システムの脆弱性診断などを行い、情報の安全を守ります。 -
クラウドエンジニア
AWSやAzureといったクラウドサービスを駆使してインフラを構築・運用する、現代の花形エンジニアです。インフラに関する幅広い知識が求められます。
インフラSEとアプリケーションSEの違い
ここで、よく比較されるアプリケーションSEとの違いを整理しておきましょう。
家づくりに例えると非常に分かりやすいです。
インフラSE | アプリケーションSE | |
役割 | 土地造成、基礎工事、電気・水道工事 | 内装、家具の配置、家電の設置 |
仕事内容 | サーバー、ネットワーク、OS、データベースなどの土台を設計・構築・運用する | ユーザーが直接触れる画面や、業務で使う機能を設計・開発する |
関心事 | 安定性、性能、セキュリティ | 使いやすさ、機能の正しさ、デザイン |
やりがい | 社会の基盤を支えている実感 | ユーザーからの「便利!」という声 |
インフラSEのやりがいと大変さ
どんな仕事にも、良い面と大変な面があります。
やりがい
-
社会を支えているという大きな実感:IT社会の基盤を自分が支えているという、強い責任感と誇りを感じられます。
-
トラブルを解決したときの達成感:大規模な障害を自分の知識とスキルで解決し、システムを復旧させたときの達成感は格別です。「ヒーロー」になったような気分を味わえます。
-
幅広い技術知識が身につく:ハードウェアからソフトウェア、クラウドまで、ITに関する広範な知識が身につきます。
大変さ
-
24時間365日のプレッシャー:システムは常に動き続けているため、夜間や休日に緊急の障害対応が発生することがあります。
-
ミスが許されない責任の重さ:インフラでの一つのミスが、システム全体の停止という大きな障害につながる可能性があります。常に慎重さと正確さが求められます。
-
ユーザーから見えにくい仕事:問題なく動いているのが「当たり前」なので、アプリケーションSEに比べてユーザーから直接感謝される機会は少ないかもしれません。
インフラSEになるには?
未経験からインフラSEを目指すことは十分に可能です。
以下のステップでキャリアを築いていくのが一般的です。
-
基礎知識を学ぶ:まずは、**「Linux」「ネットワーク(TCP/IP)」「セキュリティ」**の三大基礎知識を学びましょう。書籍や学習サイトを活用するのがおすすめです。
-
資格を取得する:インフラの知識は目に見えにくいため、資格がスキルの客観的な証明になります。
-
CCNA:ネットワークの登竜門資格
-
LPIC / LinuC:Linuxの技術者認定資格
-
AWS認定資格:クラウドのデファクトスタンダード
-
-
運用・監視業務からスタート:未経験の場合、まずはシステムの運用・監視業務からキャリアを始めることが多いです。ここで実務経験を積みながら、障害対応のノウハウを学びます。
-
構築、そして設計へ:経験を積んだら、徐々にシステムの構築や設計といった上流工程へとステップアップしていきます。
まとめ
インフラSEは、ITサービスの「当たり前」を創造し、守り続ける、社会にとってなくてはならない存在です。
その仕事は決して派手ではありませんが、私たちの生活やビジネスを根底から支える、非常に重要でやりがいのある仕事です。
常に新しい技術を学び続ける探求心と、社会基盤を支えるという強い責任感を持てる人にとって、インフラSEは最高のキャリアとなるでしょう。
「システムエンジニア(SE)として、自分の市場価値を高めたい」「将来のために何かスキルアップしたいけど、どの資格を取ればいいかわからない…」 IT業界で働く多くのSEが、このような悩みを抱えています。 技術の進化が速いこの世[…]