世界のITエンジニア年収ランキングTOP10!日本は衝撃の20位!その理由とは?

【公的データで見る】世界のSE年収ランキングTOP10!日本は20位!なぜ給与が上がらないのか徹底解説

世界のITエンジニア年収ランキングTOP10!日本は衝撃の20位!その理由とは?
考える人
「自分のSEとしての年収は、世界的に見て妥当なのだろうか?」
「キャリアを考える上で、客観的なデータに基づいた自分の現在地を知りたい」

多くのシステムエンジニア(SE)が抱くこの切実な問いに、信頼できるデータで答えます。

この記事で参照するのは、ヒューマンリソシア株式会社が発表した**『DATA BOOK 2023 世界94カ国・地域のITエンジニア給与調査』**です。

 

この調査の特筆すべき点は、その信頼性にあります。個人のアンケート調査ではなく、ILO(国際労働機関)やOECD(経済協力開発機構)、各国の統計機関といった公的データを基に分析されており、マクロで客観的な視点から世界のITエンジニアの給与水準を浮き彫りにしています。

 

本記事では、この最も信頼できるデータを基に、世界のITエンジニア年収ランキングTOP10を発表。

そして、日本の衝撃的な順位と、なぜ「技術大国」の給与がこれほどまでに伸び悩んでいるのか、その構造的な理由を深掘りします。

データ参照元: 世界94カ国・地域のITエンジニア給与調査(2023年版)

 

第1章:世界のITエンジニア(SE)年収ランキング TOP10

第1章:世界のITエンジニア(SE)年収ランキング TOP10

 

早速、世界の頂点に立つ国々を見ていきましょう。

ここでは、米ドル建ての年収を、現在の為替レート(1ドル=157円で換算)で円換算した参考金額も併記します。

 

順位 国名 年収(ドル) 年収(日本円換算)
1位 スイス $109,067 約1,712万円
2位 アメリカ $92,378 約1,450万円
3位 イスラエル $76,535 約1,201万円
4位 デンマーク $69,579 約1,092万円
5位 ノルウェー $64,367 約1,011万円
6位 ドイツ $63,277 約993万円
7位 オーストラリア $61,048 約958万円
8位 カナダ $58,355 約916万円
9位 オランダ $57,987 約910万円
10位 イギリス $57,801 約907万円
20位 日本 $40,233 約632万円

 

ランキング上位には、欧米の先進国が名を連ねています。

圧倒的な首位はスイス。金融や製薬といった高付加価値産業が集まり、国全体の賃金水準が非常に高いことが大きな要因です。

2位のアメリカは、GAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)に代表される巨大IT企業が、世界中から優秀なエンジニアを引き抜くために熾烈な獲得競争を繰り広げており、実力が報酬にダイレクトに反映されます。

そして3位のイスラエルは、「中東のシリコンバレー」として国を挙げてハイテク産業を推進。

特にサイバーセキュリティ分野では世界をリードしており、高度なスキルを持つエンジニアが高待遇で迎えられています。

 

TOP10に共通するのは、ITを国家成長のエンジンと捉え、その担い手であるエンジニアを専門職として高く評価し、相応の報酬で報いる文化が根付いていることです。

 

第2章:日本の現在地は?衝撃のランキング結果

第2章:日本の現在地は?衝撃のランキング結果

 

同調査によると、日本のITエンジニアの平均年収は40,233ドル(約632万円)。順位は、調査対象94カ国・地域の中で20位でした。

アジアの中ではシンガポール(16位)に次ぐ位置ですが、世界のトップとは大きな隔たりがあります。

 

1位のスイスとは約2.7倍、2位のアメリカと比べても2倍以上の差が開いています。

高い技術力を持ち、勤勉であるはずの日本のエンジニアの給与が、なぜこれほどまでに伸び悩んでいるのか。その背景には、日本のIT業界が長年抱えてきた、根深い構造問題が存在します。

 

第3章:なぜ日本の給与は上がらないのか?構造的な5つの要因

第3章:なぜ日本の給与は上がらないのか?構造的な5つの要因

 

日本のSEの年収が世界水準に追いつけない理由は、決して個々のスキル不足が原因ではありません。

業界構造、企業文化、経済環境といった、複合的な要因が複雑に絡み合っています。

 

要因1:根深い「多重下請け構造(SIer構造)」

日本のIT業界を象徴する、最も根深い問題です。大企業などの発注者から、元請けの大手SIer(システムインテグレーター)、そこから二次請け、三次請け…と、一つのプロジェクトがピラミッドのように階層的に再委託されていく構造を指します。

この構造では、仕事が下の階層に流れるたびに、中間マージン(手数料)が抜かれていきます。 本来、開発に投じられるべき予算は各階層の企業の利益として吸収され、実際に手を動かしてコードを書く末端のエンジニアに届く頃には、ごくわずかな金額しか残りません。結果、同じスキルを持っていても、ピラミッドのどの階層で働くかによって報酬に天と地ほどの差が生まれてしまうのです。

 

要因2:技術力より年次を重んじる「年功序列」の評価制度

アメリカのIT企業では、特定の技術を極めた「スペシャリスト」が、チームを管理する「マネージャー」と同等、あるいはそれ以上に高く評価され、高額な報酬を得ます。

一方、日本の多くの企業では、いまだに年功序列や終身雇用の文化が根強く残っています。エンジニアのキャリアパスは、現場で数年経験を積んだ後、管理職であるプロジェクトマネージャーになることが「出世」と見なされがちです。これにより、純粋に技術を追求したいスペシャリストは、一定の年齢になると給与が頭打ちになってしまいます。

 

要因3:ITを「コスト」と捉える経営意識

これも日本企業に特徴的な傾向です。欧米の先進企業が、ITを「ビジネスモデルを変革し、新たな競争力を生み出すための戦略的投資(攻めのIT)」と捉えているのに対し、日本の多くの企業は、ITを**「現状業務を効率化し、経費を削減するためのコスト(守りのIT)」**と見なしています。ITが「コスト」扱いでは、IT部門やエンジニアの人件費は、可能な限り抑えようという力が働きます。

 

要因4:転職が少ない「労働市場の流動性の低さ」

海外では、エンジニアがより良い待遇やキャリアを求めて、数年単位で積極的に転職するのは日常茶飯事です。これにより人材の流動性が高まり、企業側も優秀な人材を確保し、引き留めるために魅力的な給与を提示せざるを得ません。一方、日本では「一つの会社に長く勤めること」が美徳とされてきた歴史もあり、労働市場の流動性が低いのが現状です。この流動性の低さが、企業間の健全な給与競争を阻害しています。

 

要因5:長引くデフレ経済

「失われた30年」とも呼ばれる長期間のデフレ経済も、賃金が上がらない大きな原因です。物価が上がらないため、企業も賃上げに極めて慎重になります。稼いだ利益を賃金として従業員に積極的に還元するよりも、不測の事態に備えて「内部留保」として溜め込む企業が多いのも日本の特徴です。

 

第4章:未来を切り拓くためにSEができること

第4章:未来を切り拓くためにSEができること

 

ここまで日本のIT業界が抱える厳しい現実を解説しましたが、悲観するだけでは何も変わりません。DX(デジタルトランスフォーメーション)の波や深刻なIT人材不足を背景に、本当に価値のあるスキルを持つエンジニアの需要は確実に高まっています。

 

この変化の時代を生き抜くために、私たち個人ができることは何でしょうか。

 

  1. 市場価値の高い専門スキルを磨く
    クラウド(AWS, Azure, GCP)、AI・機械学習、データサイエンス、サイバーセキュリティといった、需要が供給を大きく上回っている分野のスキルを深く学ぶことは、自身の価値を飛躍的に高めます。

  2. 英語力を身につけ、世界に目を向ける
    ランキングを見てもわかる通り、高年収の国の多くは英語でのコミュニケーションが基本です。英語力を身につければ、高待遇の外資系企業への転職や、海外のリモート案件を獲得するといった選択肢が現実のものとなります。

  3. 自身の市場価値を把握し、行動する
    転職サイトに登録したり、専門のエージェントと面談したりして、自分のスキルが現在の市場でいくらで評価されるのかを客観的に把握しましょう。そして、もし現在の待遇が見合っていないと感じるなら、より良い環境を求めて転職や副業に挑戦する勇気を持つことが重要です。

 

まとめ

まとめ

 

ILOなどの公的データに基づく信頼性の高い調査は、日本のSEが世界の中で決して高いとは言えない待遇にあるという、厳しい現実を浮き彫りにしました。

 

その背景には、多重下請け構造や年功序列といった、日本の社会・経済が抱える根深い問題があります。

しかし、時代は確実に変化しています。個々のエンジニアが自身の市場価値を正しく認識し、スキルを磨き、より良い環境を求めて行動することで、この構造を変える原動力となることができます。