
「SE(システムエンジニア)は高収入」というイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし、その実態はキャリアステージによって大きく異なります。
自身の現在地は平均と比べてどうなのか、将来どれくらいの年収を目指せるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、最も信頼性の高い公的統計の一つである厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」の最新データを基に、SEの年齢別平均年収ランキングを徹底解説します。
ランキングの数字だけでなく、各年代で求められる役割やキャリアパス、そして平均年収をさらに超えていくための具体的な方法までを深掘りします。
ご自身のキャリアプランニングや目標設定の参考に、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事では、賃金構造基本統計調査の職種分類の中から、SEの実態に最も近い「システムコンサルタント・設計者」のデータを参照しています。
SEの年齢別・平均年収ランキング(2023年版)
まずは、結論となる年齢別の平均年収ランキングを見ていきましょう。
データ出典: 厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」
対象職種: システムコンサルタント・設計者
順位 | 年齢階級 | 平均年収 | (参考) 月収 | (参考) 年間賞与など |
1位 | 55~59歳 | 1,071.6万円 | 65.6万円 | 284.4万円 |
2位 | 50~54歳 | 1,065.3万円 | 64.9万円 | 286.5万円 |
3位 | 45~49歳 | 975.3万円 | 60.1万円 | 254.1万円 |
4位 | 40~44歳 | 915.5万円 | 57.0万円 | 231.5万円 |
5位 | 35~39歳 | 822.8万円 | 52.1万円 | 197.6万円 |
6位 | 30~34歳 | 714.6万円 | 46.1万円 | 161.4万円 |
7位 | 25~29歳 | 578.4万円 | 38.3万円 | 118.8万円 |
8位 | 20~24歳 | 402.9万円 | 29.5万円 | 48.9万円 |
– | (全体平均) | 778.2万円 | 51.7万円 | 157.8万円 |
※月収は「きまって支給する現金給与額」、年収は1万円未満を四捨五入しています。
このランキングから、SEの年収は年齢と経験を重ねるごとに着実に上昇し、50代で1000万円を超えるピークを迎えるという典型的な年功序列型の賃金カーブを描いていることが明確にわかります。
ランキング詳細解説:SEの年代ごとの役割とキャリアステージ
次に、各年代の平均年収の背景にある「求められる役割」や「キャリアパス」について詳しく見ていきましょう。
20~24歳(平均年収:402.9万円)
新卒で入社し、社会人・エンジニアとしての基礎を学ぶ時期です。
OJT(On-the-Job Training)を通じてプログラミング言語や開発プロセス、ビジネスマナーなどを習得します。
まだ一人で担当できる業務は限られますが、専門職としてのスタートラインは他の職種と比べても高い水準にあります。
25~29歳(平均年収:578.4万円)
年収が約175万円もジャンプアップする、
まさに急成長期です。基礎固めを終え、プロジェクトの一員として自律的に動けるようになります。
小規模な機能開発の主担当を任されたり、後輩のコードレビューをしたりと、責任範囲が拡大。
この時期にどれだけ多くの経験を積み、技術的な引き出しを増やせるかが、30代以降のキャリアを大きく左右します。
30~34歳(平均年収:714.6万円)
チームの中核を担う存在へと成長し、年収は700万円台に突入します。
単にコードを書くだけでなく、担当機能の設計や技術選定にも関わるようになります。
顧客との折衝や後輩の指導など、技術力に加えてコミュニケーション能力やマネジメントの素養も求められ始めます。
35~39歳(平均年収:822.8万円)
年収は800万円を超え、多くのSEがキャリアの分岐点を迎えます。
プロジェクトリーダーや小規模プロジェクトのマネージャーとしてチームを率いる**「マネジメント」の道か、特定の技術領域を極める「スペシャリスト(専門職)」**の道かを選択する時期です。自身の適性や志向を見極め、キャリアの軸足をどこに置くかを考えることが重要になります。
40~44歳(平均年収:915.5万円)
年収は900万円台に乗り、プロジェクトマネージャー(PM)やチームの課長職など、管理職として活躍する層が増加します。
大規模で複雑なプロジェクト全体を俯瞰し、予算、品質、納期、人員のすべてに責任を持つ立場です。
技術的な知見に加え、高度な管理能力とビジネス視点が不可欠となります。
45~49歳(平均年収:975.3万円)
平均年収は1000万円目前となります。
PMとしての経験をさらに積むほか、ITコンサルタントとして企業の経営課題を技術で解決したり、ITアーキテクトとして全社的なシステム基盤を設計したりと、より上流かつ経営に近いポジションで価値を発揮します。
50~54歳(平均年収:1,065.3万円)・55~59歳(平均年収:1,071.6万円)
ついに平均年収が1000万円の大台を突破し、キャリアのピークを迎えます。
この年代では、部長職や事業部長、CTO(最高技術責任者)といった経営層に近い立場で組織全体を動かす役割を担います。
あるいは、特定の分野で追随を許さない技術力を持つ「主席エンジニア」「技術顧問」として、その豊富な経験と知見を活かし、組織の技術力向上や若手の育成に貢献します。
SEの平均年収を左右する3つの重要ファクター
ここまで年齢別の平均値を見てきましたが、同じ年代でも年収に大きな差が生まれるのが現実です。
その差を生む要因は何でしょうか。ここでは3つの重要ファクターを解説します。
一般的に、中小企業よりも大企業の方が給与水準や福利厚生は手厚い傾向にあります。
また、業種による差も顕著です。特に外資系IT企業、コンサルティングファーム、金融機関のIT部門などは、高い専門性が求められる分、年収も高くなる傾向があります。
自社サービスを展開するWeb系企業と、顧客のシステム開発を請け負うSIerとでも給与体系や文化は大きく異なります。
IT業界は技術の進化が速く、需要の高いスキルを持つ人材の市場価値は常に高騰します。
特に近年では、以下の分野の専門性は高年収に直結します。
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クラウドコンピューティング(AWS, Azure, GCP)
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AI・機械学習
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データサイエンス
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サイバーセキュリティ
これらの先端技術に関する知識や実務経験は、あなたの市場価値を飛躍的に高める武器となります。
一般的に、要件定義や設計といった**「上流工程」**を担うほど年収は高くなる傾向があります。
本記事で参照した「システムコンサルタント・設計者」の年収が、「ソフトウェア作成者(プログラマー)」よりも高い水準にあるのはこのためです。
プロジェクトマネージャーやITコンサルタントといった、よりビジネスや経営に近いキャリアパスを選択することも、年収アップの王道と言えるでしょう。
年収アップを目指すSEが今すぐできること
最後に、平均を超えてさらなる高みを目指すために、今日からできる具体的なアクションを3つ紹介します。
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スキルの棚卸しと目標設定
まずは自身の経験やスキルを客観的にリストアップ(棚卸し)しましょう。その上で、3年後、5年後にどのようなエンジニアになっていたいか、目標年収はいくらかを具体的に設定します。目標が明確になれば、習得すべきスキルや経験すべきプロジェクトが見えてきます。 -
市場価値を高める資格の取得
資格がすべてではありませんが、自身のスキルを客観的に証明し、市場価値を高める有効な手段です。例えば、マネジメント志向なら「プロジェクトマネージャ試験(PM)」、クラウドスキルを証明するなら「AWS認定資格」などが代表的です。 -
転職市場での情報収集
現在の会社に満足していても、外の世界を知ることは非常に重要です。転職エージェントに登録してキャリア相談をしたり、気になる企業のカジュアル面談に参加したりすることで、「自分の現在の市場価値」を客観的に把握できます。それが現職での交渉材料になったり、より良い条件の企業へ移るきっかけになったりします。
まとめ:【2023年最新データ】SEの年齢別ランキングと年収1000万円への道筋
今回は、公的データを基にSEの年齢別平均年収を解き明かしました。SEの年収は、年齢や経験と共に着実に上昇し、50代で1000万円を超えるピークを迎えるという、夢のあるキャリアパスがデータから裏付けられました。
ただし、これはあくまで全体の平均値です。変化の激しいIT業界で高い年収を得続けるためには、漫然と年次を重ねるのではなく、常に新しい技術を学び、自身の市場価値を高めるための自己投資を続けることが不可欠です。