
「AWSとかGCPとか、アルファベット3文字が並んでいて違いがわからない…」
ITの世界に足を踏み入れたばかりの方なら、誰もが一度はこう思うのではないでしょうか。
しかし、安心してください。クラウドは、正しく理解すれば決して難しいものではありません。むしろ、私たちの生活や仕事をとても便利にしてくれる、強力な味方なのです。
この記事では、クラウドの基本的な考え方から、業界をリードする3大クラウドサービス「AWS」「GCP」「Azure」それぞれの特徴、そして初心者がどれから学べば良いかまで、わかりやすく解説します。
そもそも「クラウド」って何?
クラウドコンピューティング(通称:クラウド)を理解するために、まずは昔のやり方と比べてみましょう。
昔は、ウェブサイトを公開したり、社内システムを動かしたりするには、自社でサーバーと呼ばれるコンピューターや通信機器を購入し、設置場所(サーバールーム)を確保し、24時間365日管理する必要がありました。これを**「オンプレミス」**と呼びます。
自前で全てを用意するため、初期費用が高く、専門知識を持つ管理者が常に必要で、急なアクセス増加に対応するのも大変でした。
一方、クラウドは、AmazonやGoogle、Microsoftといった巨大企業が用意してくれている、高性能なコンピューターやストレージ(データの保管場所)、様々なITサービスを**「インターネット経由で、使いたい分だけ借りる」**仕組みです。
水道や電気をイメージしてみてください。私たちは自宅に発電所や浄水場を持っていませんよね。
電力会社や水道局が提供するサービスを、使った分だけ支払って利用しています。
クラウドもこれと全く同じ考え方です。手元のパソコンとインターネット環境さえあれば、誰でもすぐに世界最高レベルのITインフラを利用できるのです。
クラウドの3大巨人:AWS, GCP, Azure
数あるクラウドサービスの中でも、圧倒的なシェアを誇るのが以下の3つです。
-
AWS (Amazon Web Services)
-
GCP (Google Cloud Platform)
-
Azure (Microsoft Azure)
この3社で世界のクラウド市場の大部分を占めており、「3大クラウド」と呼ばれています。
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. AWS (Amazon Web Services) – 業界のパイオニア、信頼の王者
一言でいうと:「サービスのデパート」。品揃えが圧倒的で、やりたいことは大抵できる。
AWSは、ECサイトでおなじみのAmazonが提供するクラウドサービスです。
2006年にサービスを開始した業界のパイオニアであり、長年にわたり世界シェアNo.1を維持しています。
【AWSの強み】
-
圧倒的なサービス数と実績:
200を超える多種多様なサービスを提供しており、「AWSを使えば実現できないことはない」と言われるほどです。仮想サーバー、データベース、AI、IoTなど、あらゆるニーズに対応できます。その長い歴史から、大企業から急成長中のスタートアップまで、世界中で豊富な導入実績があります。 -
豊富な情報量とコミュニティ:
利用者が最も多いため、インターネット上に日本語の技術ブログや解説記事、学習教材が溢れています。公式ドキュメントも充実しており、問題が発生しても解決策を見つけやすいのが最大のメリットです。初心者にとっては、この「情報量の多さ」が何よりの助けになります。
【こんな人におすすめ】
-
何から学習を始めたら良いか分からない、クラウド初心者。
-
豊富な情報やコミュニティを頼りに、自分のペースで学びたい人。
-
幅広い業界で使われている、汎用性の高いスキルを身につけたい人。
2. GCP (Google Cloud Platform) – データとAIの申し子
一言でいうと:「Googleの技術が詰まった、最先端の研究所」。データ分析やAIが得意。
GCPは、検索エンジンやGmail、YouTubeなどを運営するGoogleが提供するクラウドサービスです。
Googleが社内で利用してきた、世界最高峰の技術基盤がベースになっています。
【GCPの強み】
-
データ分析・機械学習(AI):
GCPの最大の強みは、データ関連サービスです。超高速で大規模なデータを分析できる「BigQuery」は、GCPの代名詞ともいえるサービスで、多くの企業がデータ分析基盤として採用しています。また、Googleの強みであるAIや機械学習関連のサービスも非常に強力です。 -
コンテナ技術とモダンな開発:
アプリケーションを効率的に開発・運用するための「コンテナ」技術(特にKubernetes)に強く、モダンで先進的なWebサービス開発と相性が良いです。
【こんな人におすすめ】
-
大量のデータを扱うサービスの開発に携わりたい人。
-
AIや機械学習の分野に興味がある、または活用したい人。
-
最新の技術トレンドを追いかけたいエンジニア。
3. Azure (Microsoft Azure) – ビジネス界の優等生
一言でいうと:「Windowsとの相性抜群なエリート」。
エンタープライズ(大企業)に強い。
Azureは、WindowsやOfficeでおなじみのMicrosoftが提供するクラウドサービスです。
多くの企業が既に導入しているMicrosoft製品との親和性の高さが最大の特徴です。
【Azureの強み】
-
Microsoft製品とのシームレスな連携:
Windows Serverで構築された社内システムをクラウドへ移行(リフト&シフト)するのが非常にスムーズです。また、多くの企業で使われているID管理システム「Active Directory」や、Office 365との連携も得意としています。 -
エンタープライズ向けのサポート:
昔から多くの大企業と取引してきたMicrosoftならではの、手厚いサポート体制や、企業の厳しいセキュリティ要件に応える機能が充実しています。オンプレミス環境とクラウドを連携させる「ハイブリッドクラウド」の構築にも強みを持ちます。
【こんな人におすすめ】
-
勤務先でWindows ServerやMicrosoft製品を主に扱っているエンジニア。
-
企業のIT部門で、既存システムのクラウド化を検討している担当者。
-
BtoB(企業向け)のシステム開発に携わりたい人。
結論:初心者はどれから始めるべき?
ここまで3つのクラウドを紹介してきましたが、「結局、どれを選べばいいの?」と迷いますよね。
結論から言うと、**「どれから始めても大丈夫!」**です。
なぜなら、仮想サーバーやストレージ、データベースといったクラウドの基本的なサービスの考え方は、3社とも非常によく似ているからです。どれか一つを学べば、その知識は他のクラウドを学ぶ際にも必ず役立ちます。
その上で、あえて選び方のヒントを挙げるなら、以下の通りです。
情報量で選ぶなら → AWS
初心者がつまずきやすい「エラー解決」がしやすいのは、情報量が圧倒的に多いAWSです。
目的で選ぶなら
- データ分析やAIをやりたい → GCP
- 会社のWindowsシステムと連携させたい → Azure
環境で選ぶなら
あなたの会社や、これから入りたい会社で使われているクラウドを学ぶのが、最も実践的でキャリアに直結します。
何より大切なのは、**「まず触ってみること」です。3大クラウドは、いずれも一定期間・一定量まで無料で使える「無料利用枠」**を用意しています。
実際にアカウントを作成し、管理画面を操作してみることで、自分に合ったサービスがきっと見つかるはずです。
まとめ
クラウドは、現代のITサービスを支える、なくてはならない技術です。そしてAWS、GCP、Azureは、それぞれに個性と強みを持った魅力的なプラットフォームです。
この記事を読んで、クラウドの世界への地図を少しでも手に入れられたなら幸いです。
ぜひ無料枠を使って、クラウドの世界に第一歩を踏み出してみてください。